伊藤若冲といえば、宮内庁(現・皇居三の丸尚蔵館)に受け継がれた全30幅におよぶ国宝『動植綵絵』が最高傑作として名高いですが、同時期や前後に手掛けられた虎の絵も、近年の美術研究において極めて高い評価を獲得しています。
かつて江戸絵画において虎は、円山応挙や長沢芦雪をはじめとする名だたる絵師たちも挑んだ王道の画題でした。応挙が生きた猫をベースに柔らかい毛並みを描き出し、芦雪が愛嬌のあるユーモラスな虎を描いたのに対し、若冲の虎は「超細密な毛皮描写」と「猫的なしぐさ」、そして「仏画に通じる神聖な眼光」が奇跡的なバランスで融合しています。
2000年代以降の若冲ブームを経て、若冲の虎の絵は単なる模写の域を遥かに超えた「想像力とリアリズムの極致」として国際的にも再評価が進んでおり、日本美術史における傑作のポジションを確固たるものにしています。