かつて街角の銭湯に当たり前のように鎮座していた富士山ペンキ絵。しかし現在、日本全国でペンキ絵を手がける現役の職人はほんのわずかしか存在しない。タイル画や壁紙への置き換わり、そして何より銭湯自体の減少が、この特有の絵画文化を崖っぷちへと追い込んでいる。
銭湯の壁画作業は特殊だ。営業終了後の深夜から翌日の開店までのわずか数時間、あるいは定休日の1日だけで、幅数メートルに及ぶ巨大な壁面を仕上げなければならない。下書きは一切存在しない。失敗が許されない一発勝負の世界で、長年培われた勘と体力だけが頼りとなる。