日本における愛嬌の象徴的なモデルとして、映画『男はつらいよ』の主人公・車寅次郎(寅さん)の存在は外せない。寅さんは決して完璧な人物ではない。おっちょこちょいで、喧嘩も多く、トラブルばかり引き起こす。それにもかかわらず、周囲の人間は彼を突き放すことができず、喜んで手を貸してしまう。
寅さんの魅力の根底にあるのは、見栄を張らない泥臭さと、感情の素直な開示だ。社会心理学の視点から見れば、完璧すぎる人間は他者に威圧感や緊張感を与えやすい。しかし、弱みや失敗を隠さず、素直に助けを求める人物には「助けてあげたい」という養護欲求が働く。この「可愛げのあるスキ」こそが、周囲との絆を深める強力な接着剤となる。