かつて認知症予防といえば、パズルや運動、食事療法の改善が議論の中心だった。しかし、世界の医学界が示した知見は、私たちの常識を根本から揺るがしている。中高年期における認知症予防において、最もインパクトの大きい要因として浮かび上がったのは、生活習慣病でも運動不足でもなく「耳の聞こえ」の維持だった。
耳から入る音の刺激が減少すると、脳の言語処理エリアや記憶をコントロールする海馬への入力信号が著しく途絶える。刺激を失った脳の神経ネットワークは徐々に萎縮し、情報処理機能そのものが低下していく。聞こえにくさによる社会的孤立や精神的ストレスも加わり、認知機能の急降下を招く多層的なリスクが形成されるのだ。