古尾谷雅人の真骨頂とも言える「狂気」の演技が爆発したのが、1983年の映画『丑三つの村』だ。実際に起きた大量殺人事件をモチーフにしたこの凄惨な作品で、彼は主人公・継男役を演じきった。邦画サスペンスの歴史においても極めて異彩を放つこの作品で、彼は村人たちへの憎悪と狂気に染まっていく男の心理を鬼迫の演技で表現した。
撮影現場での彼は、役柄と一体化するあまり圧倒的な緊張感を放ち、共演者やスタッフをも呑み込んだという。単なる過激なバイオレンス映画に終わらず、人間が持つ極限状態の孤独と悲哀を浮かび上がらせたのは、間違いなく彼の演技力ゆえだった。今や伝説として語り継がれるこの作品は、彼が単なる二枚目俳優ではなく、命がけで役に没入する本物の「怪優」であることを証明した。