日本人の学習者から「なぜ女性が年上女性をヌナと呼んではいけないのか」という質問が頻繁に寄せられます。その最大の理由は、韓国語における親族呼称が「発話者のジェンダー(性別)」と不可分に結びついているためです。
韓国社会において、女性が別の女性に向かって「ヌナ」と呼ぶと、ネイティブの耳には「男の言葉遣いを不自然に真似している」あるいは「文法的に重大な間違いを犯している」と映り、強い違和感を与えます。英語で言うところの代名詞の取り違え(HeとSheの混同)に近い感覚です。
また、韓国社会は儒教思想を背景にした厳格な序列意識を持っています。年齢が1歳でも上であれば言葉遣いを分ける文化が存在する一方で、親しい関係になった証としてこうした親族呼称を用いることで、「家族同然の心理的セーフティネット」を構築します。その秩序を守るためのルールとして、発話者の性別ごとの呼び分けが何百年にもわたり強固に維持されているのです。