坂口良子という存在は、テレビドラマ黄金期における特別な象徴だった。『前略おふくろ様』で見せた愛くるしい表情、そして『池中玄太80キロ』で見せた芯の通った女性像は、日本中のお茶の間を虜にした。フジテレビジョンをはじめとする各局の看板ドラマに引っ張りだこだった彼女の演技は、天真爛漫でありながらどこか哀愁を漂わせ、観る者の胸を締め付けたものだ。
だが、カメラの前で見せる完璧な笑顔の裏には、多額の借金保証や私生活での苦闘が常に付きまとっていた。一人娘である杏里に対して注がれた愛情は狂おしいほどに深かったが、その過保護とも言える献身が、皮肉にも後の母娘関係に複雑な歪みをもたらすこととなる。