街のカフェが「挽きたて」「淹れたて」の鮮度を競い合うなか、ここにはまったく異なる時間が流れている。それが、生のコーヒー豆を数年から数十年単位で寝かせる「オールドビーンズ(生豆熟成)」の世界だ。
専用の棚で静かに眠り続けてきた生豆たち。中には1970年代や80年代に収穫された貴重なクロップも眠る。長きにわたる熟成によって水分が抜け、角が丸くなった生豆を、熟練の焙煎士が直火で丹念に煎り上げる。カップに注がれた褐色の液体は、まるで熟成したヴィンテージワインのような深みと、澄み切った余韻を宿す。時間という不可逆な要素が織りなすこの味は、効率を最優先する現代社会への優雅なアンチテーゼと言えるだろう。