厳しい冬を越すための保存食や家庭料理として愛されてきた北海道郷土料理。その代表格である羊肉料理(生ラム・マトン)は、いまやガストロノミーの領域へと足を踏み入れている。羊肉の評価基準は、単なる柔らかさから、脂の融点、飼育環境、熟成期間による風味のグラデーションへと多様化した。
生後1年未満の「ラム」のみずみずしくミルキーな風味はもちろんのこと、近年では大人の羊である「マトン」の深いコクと野性味を再評価する動きが目立つ。熟練の肉職人が適切なトリミングを施したマトンは、噛むほどに芳醇なアミノ酸の旨味が広がり、力強い赤ワインや地元の地酒と抜群の相性を見せる。
素材の良さをストレートに味わう生ラムと、噛みしめる悦びを教えてくれるマトン。それぞれの個性を引き出す炭火の遠赤外線効果と鍋の形状。旭川の焼き手たちは、肉の厚み1ミリ、火加減ひとつにまで神経を研ぎ澄まし、伝統の味を現代の洗練された一皿へとアップデートし続けている。