デジタル空間での体験が日常の大半を占める現代っ子たちにとって、平坂の泥臭い冒険譚は一種のショック療法として作用する。画面越しに綺麗な知識だけを摂取するのではなく、「濡れる、汚れる、臭う、痛い」といった身体的リアリティを伴う冒険の面白さを、彼は背中で語り続ける。
全国各地で開催されるトークイベントや出前授業では、彼を追って生物学の道を志したという若者たちの姿が目立つようになった。教科書の中にとじこめられた知識を野外へ解き放ち、自らの手で確かめる姿勢——それこそが、彼が次世代へ手渡している最も価値ある財産と言えるだろう。