物語の中心となるのは、山猫(やまねこ)家の人々です。彼らは一見すると平穏な日常を送っているように見えますが、その内情はそれぞれが深い傷と秘密を抱えています。
羽猫山 頼(やまねこやま らい):本作の主人公であり次男。成績優秀だった長男の死後、母の精神の崩壊を防ぐため、兄の身代わりのような優等生を演じ続けてきました。感情を殺し、嘘をつき続けることで家族の調和を保とうとしています。
羽猫山 透(とおる):幼少期に不慮の事故で命を落とした長男。家族の中で「完璧で非の打ち所がなかった兄」として神格化されており、その死が家族全員の心に暗い影を落とし続けています。
羽猫山 純(じゅん):三男。兄・頼とは対照的に、家庭内のいびつな空気に反発し、荒れた態度をとることでしか自己を表現できない不器用さを抱えています。
母(貴美子):長男・透の死を受け入れられず、現実逃避のために無意識の嘘や思い込みを重ねて生きる母親。頼に透の面影を重ね、過度な期待と依存を寄せてしまいます。
祖父・祖母:同じ屋根の下で暮らしながら、静かに家族の行く末を見守る存在。特に祖父の放つ飾らない言葉は、頼が自分を取り戻すための重要な道標となります。