パワーステアリングが存在しない、あるいは極めて強烈なダウンフォースが発生するトップカテゴリーのフォーミュラカーを操るには、男軍に勝るとも劣らない肉体的スペックが不可欠だ。コーナリング時にドライバーの頭部にかかる荷重は、自重の4倍から5倍。生半可なトレーニングでは、首が傾き視界を保つことすら不可能になる。
彼女はこの数年間、オフシーズンを捧げて徹底的な肉体改造を遂行してきた。首周りや体幹、さらには強烈なブレーキングに耐えうる下半身の筋力強化を図り、体重・筋肉量ともにレースドライバーとして理想的な数値を叩き出している。
ピット裏でアロワナのように鋭い眼光を見せるフィジカルコーチは明かす。「彼女のトレーニング強度は、並の男性アスリートを容易く上回る。体格的な不利を『努力』という単純な言葉で片付けるのは失礼なほどだ」。