あの夜、球審を務めていたのは熱血漢として知られる橘高淳氏だった。ストライクゾーンの厳格さと毅然としたジャッジで知られるベテラン審判だ。判定に対する不満をあからさまにするガルベスに対し、橘高氏も一歩も引かない構えを見せていた。
投手と審判の視線が交錯するマウンド付近には、目に見えるほどの火花が散っていた。判定への異議から交代を命じられた直後、ガルベスはベンチへ戻る振りをして反転。握りしめた硬球を、橘高球審の顔面に向かって全力で投げつけた。球は惜しくも外れたものの、もし直撃していれば命に関わる大惨事になりかねない暴走行為だった。グラウンドは一瞬にして怒号の渦と化したのである。