今日の秋葉原における街の構造変化を紐解くうえで欠かせないのが、2000年代初頭に打ち出された「IT秋葉原構想」である。当時の東京都知事であった石原慎太郎が進めた大規模再開発事業により、駅前の旧神田市場跡地には秋葉原クロスフィールドが建設され、産学連携の超高層オフィスビルが聳え立つこととなった。
この再開発は、戦後のヤミ市から派生した泥臭いジャンク街・電子パーツ街であった秋葉原に、ビジネス街としての近代的な機能を急速に注入した。都市のクリーン化と経済的価値の上昇をもたらした一方で、従来型の路面店や個人的な趣味空間を圧迫する引き金にもなった。洗練された都市開発がもたらした高コストな空間構造は、皮肉にも後にサブカルチャー文化の多様性を徐々に削ぎ落とす遠因となったと言える。