肺高血圧症の最も厄介な特徴は、発症初期において安静時にはほぼ無症状である点です。心臓から肺へ血液を送る「肺動脈」の血圧が高くなると、右心室に過度な負荷がかかります。しかし、初期段階では心臓が無理をして血液を送り出そうとするため、座っている時や就寝中には異常を感じにくい構造になっています。
肺高血圧症の初期症状として最初に現れるのが、階段や坂道を上る際、あるいは重い荷物を持った際に生じる「労作時の息切れ」と「激しい動悸」です。一般的な運動不足による息切れとの決定的な違いは、「平地をゆっくり歩く分には平気なのに、わずかな傾斜や階段で呼吸困難に陥る」という落差にあります。病勢が進行すると、靴下を履くような前屈みの動作や、入浴・着替えといった日常動作ですら強い息切れを伴うようになります。
見逃してはならない肺高血圧症の自覚症状チェックリストを以下に整理しました。心当たりのある項目が複数ある場合、決して放置してはなりません。
・平坦な道では問題ないが、階段や上り坂で同年代の人についていけない
・胸の奥が締め付けられるような圧迫感や息切れ・動悸が頻発する
・十分な睡眠をとっても回復しない重度の疲労感・倦怠感が続く
・夕方になると靴がきつくなるほど足の甲やすねに浮腫(むくみ)が出る
・立ちくらみや、運動中に目の前が真っ暗になって失神しそうになる
特に「失神(意識消失)」や「下肢の浮腫」が現れている場合、右心不全が進行しているサインであり、一刻を争う受診が必要です。