松任谷由実の楽曲を聴いていると、彼女の性格の別の一面が浮かび上がってくる。「春よ、来い」「卒業写真」「ルージュの伝言」。いずれも、人の心の機微を鮮やかに切り取った作品だ。あれほど繊細に人間の感情を描写できる人が、表面だけ荒々しい人物であるはずがない。
デビュー曲「返事はいらない」はわずか300枚しか売れなかった。しかし、TBSラジオの林美雄アナウンサーが「この人は天才です!」と大絶賛してユーミンの曲をかけるようになると知名度が上がり始め、大ブレイクのきっかけとなった。売れない時期を経験し、それでも書き続けた。その粘り強さもまた、彼女の性格の一部だ。
歌詞の世界には、孤独への共感、恋愛のほろ苦さ、時間の流れへの切なさが宿っている。大きな自信の陰に、誰よりも繊細な感受性を隠し持っているのが、ユーミンというアーティストのリアルな姿だろう。表の強さと内側の柔らかさ。その落差が、楽曲の深みとなって聴く者の心に刺さる。