「悪魔のパスポート」の基本性能は極めてシンプルでありながら、破壊力は絶大です。外見は革張りの手帳のような形状をしており、表紙には禍々しい悪魔の顔が刻印されています。使用者がこのパスポートを開いて相手に見せるだけで、「たとえ目の前で殺人や強盗を行おうとも、相手は笑顔で『いいんですよ』と許してしまう」という絶対的な強制認知バイアスを植え付けます。
原作漫画において、テストの点数が悪く親に怒られ、部屋の掃除をサボってドラえもんと大喧嘩したのび太は、自暴自棄になってドラえもんの四次元ポケットから無理やりこの道具を強奪しました。その効力は即座に発揮されます。母親の財布から現金を堂々と抜き取っても、母は笑顔で「いくらでも持っていきなさい」と返し、近所の本屋で漫画を万引きしても店主は頭を下げて見送るという、まさに狂気の免罪空間が作り出されます。
この道具の恐ろしい点は、催眠術のように相手の行動を操るのではなく、「相手の倫理判断そのものを書き換えてしまう」点にあります。被害者が被害を受けた自覚を持ちながらも、それを全面的に肯定してしまうため、法律や警察機構、社会規範のすべてが無効化されるのです。