花屋や園芸店で買い物をするとき、店頭で「アスター」と書かれていたり「エゾギク(蝦夷菊)」と書かれていたりと、呼び名の混同に戸惑う方が少なくありません。この2つの関係を植物学的に整理すると、園芸界における複雑な歴史的変遷が浮かび上がります。
現在、日本の切り花市場や種苗店で一般的に「アスター」として流通しているものの多くは、中国北部原産のキク科植物「エゾギク(学名:Callistephus chinensis)」です。エゾギクは一属一種の一年草であり、本来の植物分類上は「カリステファス属」に分類されます。
一方、植物学上の本来の「アスター(シオン属:Aster)」は、宿根アスター(ミヨシノギク、ユウゼンギク、クジャクソウなど)と呼ばれる多年草グループを指します。18世紀にヨーロッパへエゾギクが導入された当初、シオン属(Aster)に分類されていた名残で、今でも園芸界ではエゾギクのことを通称として「アスター」「チャイナ・アスター」と呼び続けているのが実態です。
花言葉の観点においては、「エゾギク」と「アスター」で意味を厳密に分ける必要はありません。どちらも「信じる心」「変化」「追憶」といった共通の文化圏から生まれた花言葉を共有しています。ただし、切り花として「仏花」のニュアンスを完全に払拭したい場合は、大輪の一年草エゾギクよりも、小花が群れ咲く宿根アスター(マイクロアスターやクジャクアスター)を選ぶと、洗練されたモダンな印象を演出しやすくなります。