2011年、芸能界に激震が走った。香川照之が46歳にして九代目市川中車を襲名し、歌舞伎界へと身を投じることが発表されたのだ。同時に、実子である政明(現・市川團子)もまた、五代目市川團子として初舞台を踏むこととなった。この無謀とも言える挑戦の裏には、父との和解、そして何よりも「澤瀉屋の血脈を途絶えさせてはならない」という執念があった。
周囲の猛反対や冷ややかな視線が注がれる中、浜木綿子はこの決断を静かに支持した。かつて自分を捨てた男の家門へと息子と孫を送り出す――その胸中は複雑極まりないものであったはずだ。しかし、彼女は「息子が決めた道だから」と、その背中を力強く押した。この母の度量の広さこそが、香川が新たな一歩を踏み出すための最大の盾となったのである。