入浴中に眠気が引き起こされる生理学的メカニズムには、体温変化と血管の挙動が深く関わっています。湯船に浸かると、身体は体内に熱がこもりすぎるのを防ぐため、皮膚表面の毛細血管を一気に広げて放熱を試みます。これに伴い、全身を循環する血液が体表近くへと集中し、重要臓器である心臓や脳へ送られる血流量が目減りします。
この血管拡張に伴う急激な血圧低下こそが、入浴中に生じる脳貧血(一過性脳虚血)の主因です。脳への酸素供給が不足すると、脳は生命維持のための防衛反応として意識レベルを低下させます。これが「うとうととした心地よい眠気」として自覚される正体です。
さらに、温かいお湯に浸かることで自律神経の副交感神経が強制的に優位になり、全身の筋肉が弛緩します。そこへ日常の疲労限界や睡眠不足が重なっていると、身体は低下した血圧と酸素不足に抗うことができず、完全に意識を失って深い昏睡状態へと移行してしまうのです。