『冬のなんかさ、春のなんかね』のあらすじは、冬枯れの街で立ち止まっていた詩織が、偶然立ち寄ったカフェでかつて突然姿を消した遥斗の個展ポスターを見つけるところから静かに動き出します。
3年前に突如として途絶えた二人の関係。なぜ遥斗は何も言わずに去ったのか、そしてなぜ今になって詩織の生活圏に現れたのか。物語中盤では、遥斗が抱えていた家族の問題と、詩織が彼に無意識に押し付けていた「理想の自分」という重圧が明らかになっていきます。ここで効いてくるのが、序盤から何度もインサートされた「色温度の違う写真」や「コートのポケットに握りしめられたままの鍵」といった小道具の存在です。
『冬のなんかさ、春のなんかね』の伏線回収において最も鮮烈だったのは、第2話で詩織が口にした「春が来るのが怖い」という何気ない一言の真意です。これは単なる季節の好悪ではなく、過去の決別と新たな一歩に伴う痛みを恐れる彼女の防衛本能でした。最終盤において、雪乃が遥斗の過去の作品を隠匿していた理由や、藤枝が二人を優しく見守りつつも決して踏み込まなかった動機が次々と氷解し、すべてのピースがひとつの絵として結実します。