インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「妊娠中はワクチンを避けるのが母性」「薬物は一切入れない方が安全」といった言説が散見されます。こうした言説の背景には、胎児に対する未知の影響への恐怖心や、かつての薬害に対する漠然とした不安が存在します。しかし、妊娠中のインフルエンザワクチンによる胎児への影響について、現代の医学研究は明確な回答を出しています。
国内で接種されているインフルエンザワクチンは、病原性を完全に無くした「不活化ワクチン」です。生ワクチンと異なり、体内でウイルスが増殖することは構造上あり得ません。数万人規模を対象とした国内外の大規模コホート研究においても、母体への接種が胎児の先天異常、形態異常、流産、早産のリスクを増加させないことが統計的に証明されています。母体の腕に打たれた不活化ワクチンそのものが胎盤を通過して胎児に直接届くことはなく、体内で作られた免疫グロブリン(IgG抗体)のみが胎盤を介して穏やかに赤ちゃんへ届けられます。