アロノフスキーが特異なのは、インディペンデントの過激な精神を保ちながら、メジャー配給網を巧みに掌握してきた点にある。『レスラー』や『ブラック・スワン』を世に送り出したサーチライト・ピクチャーズとのタッグでは、作家性を前面に押し出しつつも世界的な大ヒットを記録し、批評と興行の両面で大きな勝利を収めた。
近年では、先鋭的な映画製作で映画ファンを惹きつける気鋭スタジオ「A24」との連携が記憶に新しい。過度な商業的制約を嫌うアロノフスキーにとって、作家の作家たるエゴを最大限に尊重するA24の土壌はまさに理想的なキャンバスだった。インディペンデントの純度を守りながら、世界規模の熱狂へとスケールアップさせる彼の嗅覚は、現代映画界において極めて稀有な才能といえる。