2010年代半ばから講談社『Kiss』で連載され、ドラマ化もされた東村アキコ氏の漫画『東京タラレバ娘』は、「もっといい男が現れたら」「痩せれば結婚できる」と居酒屋で語り合うアラサー女性たちの姿を描き、爆発的な共感と同時に激しい自己批判の嵐を巻き起こしました。
この作品が抉り出したのは、日本社会特有の「選択肢の過多による決断麻痺」と「現状維持バイアス」です。SNSや知恵袋、コミュニティフォーラムを定点観測すると、現代人が抱く「たられば」の構造は時代とともに変化しつつも、根底にある不安の本質は共通しています。
SNS上のリアルな投稿を分析すると、以下のような声が顕著に見られます。
・「20代の頃に『もっとスキルを身につけていれば』と後悔するが、30代になった今も同じように『時間があれば』と言い訳して動けていない自分に絶望する」(30代会社員・X投稿より)
・「転職の相談を受ける際、応募を見送った理由を『条件が合っていれば受けていた』と語る人は、数年後も同じ会社で同じ愚痴を繰り返している」(キャリアアドバイザーの証言)
人は傷つくことを恐れるあまり、「行動しなかった自分」を正当化するために「たられば」という安全地帯に逃げ込みます。しかし、その仮定の防壁に留まり続ける限り、年齢や環境といった現実のタイムリミットだけが無情に進行していくという冷徹な事実を、私たちは直視しなければなりません。