1990年代後半から2000年代初頭にかけて、日本のモバイル文化は世界が目を見張るほどの独自進化を遂げる。その頂点に君臨したのが、1999年にNTTドコモが開始した「iモード」だった。
通信速度がまだキロバイト単位だった時代に、端末の小さな液晶画面でメールを送り、電車の時刻表を調べ、銀行残高を確認する。世界がテキスト通話に留まっていた頃、日本はすでに掌の上で本格的なインターネット経済圏を確立していた。絵文字、着メロ、写メール、そして「おサイフケータイ」やワンセグ機能――。日本のフィーチャーフォンは、職人技のようなハードウェア設計と通信キャリアによる強力な垂直統合エコシステムによって、世界最先端の多機能デバイスへと研ぎ澄まされていった。
だが、独自の生態系で完璧に調和していたこの「ガラパゴス」の楽園に、突如として巨大な黒船が姿を現す。