一般的にクリオネと呼ばれるこの生物の正式な和名はハダカカメガイだ。分類上は巻き貝の仲間(翼足目)に属するが、成長の過程で貝殻を完全に脱ぎ捨てる異色の進化を遂げた。この不思議な海洋生物を西欧社会に初めて報告したのは、18世紀のフランス人探検家シャルル=アレクサンドル・ルセールである。
1774年、北極海の苛烈な大自然を調査していたルセールは、流氷の合間を漂うこの未知の生物を採取し、詳細なスケッチと観察記録を残した。貝殻を持たない軟体動物でありながら天使のような羽を持つ構造は、当時の欧州博物学界に衝撃を与えた。ルセールが残した功績は、現代の海洋生物学における極圏生態系研究の礎として高く評価されている。