日本が国内の覇権をめぐって揺れていた頃、世界もまた巨大な構造変化の渦中にあった。アメリカでは南北戦争が熾烈を極め、近代兵器の導入によってかつてない規模の死傷者が発生していた。戦争の形態が殺傷能力を飛躍的に高める中、旧来の軍事戦略や救護体制は完全に破綻していた。
そうした人道的な悲劇への反省から、ヨーロッパではアンリ・デュナンらの提唱により赤十字国際委員会が本格的な活動を開始し、最初のジュネーヴ条約が採択された。日本の幕末動乱と世界の近代化・人道主義の発展は、同一のタイムライン上で響き合っていたのである。