公式が「違う」と言っても、誰も信じない。いや、信じたくないのだ。青山剛昌氏がインタビューやファンレターへの返信で「阿笠は黒幕ではない」と明言したのは一度や二度ではない。それでもなお、考察班の火は消えない。むしろ、物語が核心に迫るほど、その疑念は深まるばかりだ。
この現象の背景には、ミステリー小説における「信頼できない語り手」や「灯台下暗し」の鉄則がある。最も無害に見えるキャラクターこそが、実はすべての糸を引いている。アガサ・クリスティへのオマージュが散りばめられた本作において、その名を持つ男が無関係であるはずがないという直感が、読者の脳裏から離れないのだ。