日本中がタイガーマスクフィーバーに沸く最中、衝撃の事態が発生します。1983年8月10日、佐山聡氏は新日本プロレスへ突然の契約解除届を提出し、わずか2年4ヶ月でタイガーマスクの歴史にピリオドを打ったのです。当時25歳、まさに選手生命の絶頂期でした。
なぜ彼は頂点の座をあっさりと捨て去ったのか。その電撃引退の真相には、複数の根深い要因が絡み合っていました。
第一に、新日本プロレス内部で勃発していた深刻な派閥抗争とクーデター騒動です。過密な試合日程と興行中心の運営体制の中で、佐山氏はレスラーとしての尊厳と組織の歪みに強い不信感を抱くようになっていました。
第二に、「本物の格闘技」を追求したいという佐山聡氏自身の強い信念です。アニメのキャラクターを演じ続けることへの精神的な葛藤、そしてエンターテインメントとしてのプロレスではなく、真剣勝負(リアルファイト)の中で己の技術を試したいという武道家としての純粋な欲求が、彼をプロレス界の外へと突き動かしました。