人間には、自らの安全が確保された場所から、恐ろしい深淵を覗き見たいという根源的な欲求が存在する。心理学においてこれは「安全な恐怖の体験」とも呼ばれ、ホラー映画や実録犯罪(トゥルークライム)コンテンツが人気を博す理由でもある。しかし、それが実在の犠牲者を伴うものである場合、消費のモラルが問われることになる。
読者の中には、「二度とこのような悲劇を繰り返さないために知るべきだ」という正当化を行う者も少なくない。だが、その知的欲求の裏には、タブーに触れることによるスリルや、加害者に対する道徳的優位性を確認したいという無意識のバイアスが潜んでいる。私たちは、他者のリアルな苦痛をエンターテインメントとして消費しているという事実から、目を背けるべきではないだろう。