ニューヨーク市中心部を襲った未曾有の悲劇から長い時間が流れた今、9.11遺体の現在の状況は法医学史上類を見ない長期戦の様相を呈しています。世界貿易センタービルで犠牲となった2,753名のうち、身元の確認が完了した犠牲者は全体の約6割にとどまります。公式記録上、身元不明の人数はいまだ1,100人を超えており、遺族のもとへ遺骨の一部すら戻っていないケースが数多く存在します。
事件現場から回収された遺体・遺骨の破片は約2万1,905点にのぼります。ニューヨーク市検視局(OCME)は事件直後からこれらの遺留品や骨片を保管し、地道な照合作業を続けてきました。しかし、回収された破片の多くは親指の爪ほどの微細な骨片であり、1人の犠牲者に対して複数の断片が散らばっているケースも珍しくありません。統計上の数字は単なる未解決データの集積ではなく、今もなお家族の帰りを待ち続ける遺族の深い苦悩そのものを物語っています。