岐阜県関市の山深い板取地区、鬱蒼とした木々に抱かれる根道神社(ねみちじんじゃ)の参道脇に、その池はひっそりと横たわっています。もともとは観光地として造成された場所ではなく、地域住民によって管理されてきた貯水池でした。公的な固有名称が存在しなかったことから、地元では長年「名もなき池」と呼ばれていた歴史を持ちます。
1990年代後半に近隣で花苗店を営む住民が睡蓮を植え、愛好家が錦鯉を放流したことを契機に、現在の美しい景観の基礎が整いました。2015年頃からウェブ上の写真投稿を通じて爆発的な知名度を獲得し、通称「モネの池」として全国区の観光地へと変貌を遂げた経緯があります。
この池が際立った美しさを誇る背景には、明確な地形学的・水質的メカニズムが存在します。池に注ぎ込む水は、隣接する高賀山(こうかさん)水系から湧き出るミネラル分豊富な伏流水です。水温は年間を通じて約14度前後に保たれており、微生物やプランクトンが極めて繁殖しにくい「貧栄養湖」に近い純度を保っています。
さらに池の底面には、石英や長石を主成分とする白い火山灰性の砂(珪砂)が堆積しています。太陽光がこの白砂に反射することで水中の青色波長が強調され、周囲の木々の緑や睡蓮の葉と混ざり合うことで、特有のエメラルドグリーンやコバルトブルーの水色が生み出されているのです。