SNSやネット上の自己啓発言説において、長年まかり通っている誤解が「喜怒哀楽が豊かな人は人間味があって魅力的であり、感情を表に出さない人は冷酷で不健全だ」という短絡的な二元論です。しかし、実際の臨床データや組織分析はこの俗説を真っ向から否定しています。
喜怒哀楽が豊かであることのメリットとして、他者との心理的距離を急速に縮める愛嬌や共感力、クリエイティブな熱量が挙げられるのは事実です。しかし、それが自己抑制を欠いた「単なる感情の垂れ流し」である場合、組織心理学でいう感情的伝染(Emotional Contagion)によって周囲に毒素を撒き散らす危険な存在と化します。
反対に、無表情で一見冷たく見える人物が、実は高い「情動安定性(Emotional Stability)」と深い他者配慮を備えているケースは珍しくありません。「感情を出さない」のではなく、「自分のネガティブな感情で場を乱さないために配慮している」という高度な自制心の発露である場合も多いのです。表面的な表情の起伏だけで相手の人間性を判断することは、人間関係の致命的な見誤りにつながります。