緑色の鼻水が出ると「これは重症だ」「抗生物質が必要だ」と考える人は多い。しかし、ここには重要なニュアンスがある。緑色の鼻水そのものは、ウイルス性の風邪でも起こり得る正常な免疫反応の現れであり、色だけを根拠に抗生物質を処方することは、医学的に推奨されていない。
実際に、急性副鼻腔炎の大半はウイルス性であり、細菌性であっても多くのケースは自然治癒する。系統的レビューによれば、急性副鼻腔炎と診断された患者のうち、抗生物質が明確に有効なのは一部に限られ、過剰な処方は耐性菌の温床となるリスクがあると指摘されている。日本の耳鼻咽喉科医の間でも「鼻水が緑だから即抗菌薬」という判断は時代遅れになりつつある。
では、どのような場合に抗生物質が検討されるのか。一般的な目安として挙げられるのは、以下の条件を複数満たすケースだ。
① 症状が10日以上続いている
② 一旦改善した後に再び悪化する二峰性の経過をたどっている
③ 38度以上の発熱が3日以上続く
④ 顔面の強い痛みや腫れ、特に片側の頬や目の奥に限局する痛みがある
⑤ 免疫力が低下している基礎疾患がある、または高齢者・乳幼児である
これらの条件に該当する場合、細菌性副鼻腔炎の可能性が高いとして、耳鼻科での診察と培養検査に基づいた抗生物質の選択が行われる。自己判断で市販の抗菌薬を使うことはできないが、仮に手元に残っていた抗生物質を飲むといった行為は絶対に避けるべきだ。耐性菌を生むだけでなく、アレルギー反応や腸内細菌叢の乱れなど、新たな問題を引き起こすリスクがある。