物語後半、銭婆(ぜにーば)の家へ向かうために千尋とカオナシが乗り込む「海原電鉄(うなばらでんてつ)」。どこまでも続く澄んだ水面の上を静かに進む列車と、水中に沈んだ線路のシークエンスは、映画史に残る名シーンとして語り継がれています。
このシーンの着想について宮崎監督は、自身の幼少期である昭和34年(1959年)に日本を襲った「伊勢湾台風」の記憶を挙げています。街全体が水没し、冠水した線路の上を列車が徐行運転した光景が、監督の脳裏に美しく切ないイメージとして焼き付いていたことが明かされています。
一方、ファンの間では愛媛県伊予市にあるJR予讃線・下灘駅 海に沈む線路が、その情景をリアルに味わえる聖地として爆発的な人気を博しました。下灘駅近くの海岸(青石海岸など)に実在する海へと続く線路は、本来は小型船を海へ降ろすための「船揚げ場(スリップウェイ)」の設備ですが、満潮時に線路が水没する光景が劇中の構図と酷似していることから、写真映えスポットとして定着しました。
※注意点として、一部の船揚げ場は私有地や漁業関係者の作業場であるため、無断立ち入りが禁止されているエリアがあります。見学時はルールとマナーの遵守が求められます。