日本で最も画数が多い漢字としてしばしば名前が挙がるのが、「たいと」あるいは「おとど」と読む84画の文字だ。「雲」を3つ、「龍」を3つ組み合わせたこの漢字は、日本で作られた「国字」の一種とされる。かつて実在した苗字に使われていたという説もあるが、戸籍データベースでの確認は難しく、半ば伝説の存在だ。
この文字を書こうとすると、ゲシュタルト崩壊との戦いになる。龍を3回、雲を3回。手書きするだけで数十秒を要するこの文字は、実用性という観点からは完全に逸脱している。しかし、だからこそ人々を惹きつけてやまない。記号としての機能を超えた、呪術的な美しさすら感じさせるのだ。