タピオカ粉を使ったパンを口にした瞬間に広がる、あの唯一無二の強いコシとみずみずしい弾力。この食感の正体は、原料である南米原産のイモノキ科植物「キャッサバ」から抽出されたタピオカ澱粉(タピオカスターチ)の分子構造にあります。
一般的な小麦澱粉やコーンスターチと比較すると、タピオカ澱粉は粘りと弾力を生み出す「アミロペクチン」の含有率が約83%と極めて高く、加熱した際に糊化(アルファ化)が始まる温度が約58〜65℃と非常に低いのが特徴です。小麦澱粉の糊化温度(約65〜75℃)よりも早く水分を抱え込んでゲル化するため、オーブンの中で生地全体の水分を逃さず閉じ込めます。
さらに決定的なのが「離水(老化)の遅さ」です。パンが冷めるとパサついて固くなるのは澱粉の老化現象ですが、タピオカ澱粉は分子の再結晶化が起きにくいため、冷めても驚くほどしっとりとした弾力を長時間キープします。この物理化学的な保水性と粘弾性こそが、パン作りの常識を覆す極上のもちもち感を生み出す最大の理由です。