甘味種であるはずのししとうを口にした瞬間、舌が麻痺するような激辛に襲われる現象は、一般に「当たり」と呼ばれます。農産物の流通データや農業試験場の研究報告によると、激辛ししとうの混入率は約10本に1本(およそ10%)とされています。
この辛味の正体は、唐辛子の主成分であるカプサイシンです。本来は穏やかな風味を持つ品種ですが、栽培期間中に以下のような外的ストレスを受けることで、果実内部の胎座(種が付く白い部分)にカプサイシンが過剰生成されます。
主な原因は、夏の猛暑・極端な乾燥(水不足)、土壌の過度な肥料ストレス、そして花粉がつかずに果実が育つ単為結果(たんいけっか)です。過酷な環境から子孫(種子)を守るための自己防衛反応として、植物ホルモンが働き辛味を急増させます。
辛い個体を調理前に見分ける視覚的サインとして、プロの目利きは以下の特徴を指摘しています。
1つ目は「形が極端に細長く、強くねじれ曲がっているもの」、2つ目は「果実の先端が丸くならず尖っているもの」、3つ目は「切ったときに中の種が極端に少ないもの」です。受粉が正常に行われなかった個体は形が不揃いになりやすく、辛味成分が濃縮されている確率が跳ね上がります。辛いものが苦手な家族がいる場合は、ねじれの強い個体を細かく刻んで炒め物に分散させるか、加熱前に形を選別するのが確実な自衛策です。