彼女の代名詞と言えば、やはり『渡る世間は鬼ばかり』で演じた中華料理店「幸楽」の姑・小島キミ役だろう。嫁の五月に対して放つ容赦ない言葉の数々は、全国の茶の間を騒然とさせた。しかし、その陰には計算し尽くされたプロフェッショナルとしてのこだわりが隠されていた。
独自取材で見えてきたのは、単なる「嫌われ役」で終わらせないための細やかな役作りだ。彼女は生前、単に意地悪な姑を演じるのではなく、「家を守ることに必死な昭和の女の悲哀」を根底に流し込むことを意識していたと語っている。長時間の長回し撮影で知られる橋田ドラマの膨大なセリフを一切の狂いなく頭に叩き込み、NGを出さない完璧な準備で現場に臨んだ。あの迫力に満ちた嫁姑バトルは、役に対する圧倒的な誠実さと、極限の緊張感の中から生まれた最高峰のエンターテインメントだったのだ。