マルタ島が「猫の楽園」と呼ばれるようになった背景には、数千年にわたる地中海の交易史と深い関わりがあります。発端は古代エジプトやフェニキア人の時代に遡り、貿易船に侵入するネズミを駆除するため、船乗りたちが猫を重宝して船に乗せていたことが島への定着の始まりでした。
決定打となったのは、中世に島を統治した「聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団)」の時代です。当時、ヨーロッパ全土で猛威を振るっていたペストなどの伝染病を防ぐため、騎士団は食糧庫や病院、街中の衛生環境を守る「衛生の守護者」として猫を公式に保護・育成しました。騎士団の病院では、猫専用の食料費が計上されていたという記録も残っているほどです。
一年を通じて温暖で雨が少ない地中海性気候も、寒さに弱い猫にとって理想的な環境でした。こうした歴史と風土が重なり合い、島民たちの間に「猫を大切にする文化」が自然と根付いていったのです。