富田林署から逃亡した樋田淳也事件の全貌と日本一周を装った足取りの真相には、長らく解明されていなかった空白が存在する。当時の捜査記録や関係者の証言を振り返ると、逃走ルートの選定は単なる行き当たりばったりではなく、警察無線の傍受や防犯カメラの設置傾向を計算に入れた極めて狡猾な移動パターンを描いていた。
転機が訪れたのは、山口県周南市にある道の駅だった。万引きを警戒していた警備員が、食料品を服の中に隠して店外に出ようとした男を呼び止めたことで事態は急転する。駆けつけた山口県警察の警察官に対しても偽名を主張し続けたが、指紋照合によって指名手配犯本人であることが確定した。48日間に及んだ逃亡生活は、最新の捜査網ではなく、地方の商業施設における日常的な保安活動によって終止符を打たれた。