街頭での募金活動からタイムラインに流れる社会貢献のアピールまで、私たちの日常は「善行」の可視化で溢れている。社会心理学の研究が示す通り、人間には他者から承認されたいという根源的な欲求がある。しかし、その欲求が暴走したとき、道徳は自己顕示のための道具へと成り下がる。これこそが、近年社会問題としても議論される美徳シグナリング(Virtue Signalling)の典型的な構図である。
実際に行動を起こすコストは払わず、ただ「私は正しい側に立っている」と周囲にアピールすることだけに腐心する。Netflixなどの配信プラットフォームで近年ヒットを記録する上質な心理サスペンス作品を観ても、最も恐ろしい黒幕として描かれるのは、あからさまな悪人ではなく、誰よりも清廉潔白に見える市民や指導者たちだ。フィクションが鋭く抉り出すこのリアリティは、現実社会の空気感を如実に反映している。