戦後復興を主導した吉田茂の長期政権に対し、激しい敵対心を燃やしたのが三木だった。吉田の独善的な政治手法を「ワンマン」と痛烈に批判し、公職追放から復帰した盟友・鳩山一郎を首相の座へ押し上げるため、持てる政治的資源のすべてを注ぎ込む。
当時の政界は複雑怪奇を極めていた。理念の異なる勢力が乱立し、昨日までの味方が今日の敵となる流動的な状況の中で、三木は水面下の工作を主導する。目的のためには政権批判を辞さず、党内反主流派や野党をも巻き込んだ大同団結を仕掛けた。その冷徹な計算と剛腕ぶりは、対立陣営に底知れぬ恐怖を与えた。
鳩山を首班とする内閣を実現するため、新党結成の旗振り役となった三木は、ついに日本民主党を結党する。吉田退陣の引き金を引いたこの電撃的な政変は、長年続いた一強体制に終止符を打ち、権力闘争の新たな幕開けを告げる号砲となった。