なぜ、狭い島内でこれほどまでに言葉が分裂したのか。徳島県の阿波弁、香川県の讃岐弁、愛媛県の伊予弁、そして高知県の土佐弁。この4つの地域差は、方言学の観点からも極めて異例とされる。
徳島(阿波弁)は関西圏との経済的・文化的な結びつきが強く、上方言葉の影響を濃厚に残す「京阪式アクセント」が色濃い。一方、讃岐山脈を隔てた香川(讃岐弁)は、どこか柔らかく「〜かいの」「〜だに」といった独特の語尾が漂い、全国的にも「可愛い方言」として高い人気を誇る。
さらに西の愛媛(伊予弁)に目を向けると、アクセントは型を持たない無アクセント地帯と東京式が複雑に混在する。「〜ぞな」「〜けん」に見られる優しくおだやかな話しぶりは、瀬戸内海の穏やかな気候そのものだ。対照的に、南国の土佐湾に面した高知(土佐弁)は、「〜ぜよ」「〜きん」「〜ちゅう」に代表される力強く断定的な言い回しが特徴的である。
四国地方を横断する四国山地がかつて巨大な天然の障壁となり、各藩が独立した文化圏を育んだことが、現在のアクセントや文法の決定的な違いを生み出した。現地で出会った70代の男性は「隣の県に行くと、若い頃は本当に言葉が通じなくて驚いたものよ」と笑う。