アニメーションにおいて夏油傑というキャラクターに絶対的な説得力を与えているのが、声優・櫻井孝宏による円熟の芝居だ。彼の発する低音で艶のある声は、穏やかで理知的な語り口の中に、一瞬で背筋を凍らせるような冷酷さと狂気を忍ばせる。非術師を「猿」と蔑む傲慢な宣告でさえ、どこか救済の祈りのように響かせる絶妙な声のトーンは、観る者を惹きつけて離さない。
さらに見逃せないのは、本来の夏油傑と、彼の肉体を操る羂索との演じ分けだ。高専時代に見せた親友への繊細な友情や挫折の哀愁と、羂索が見せる底知れぬ悪意や冷笑。同じ肉体、同じ声帯でありながら、内面に巣食う人格の異様さをわずかな息遣いや抑揚の変化で表現しきる技術は、国内外のファンから絶大な評価を得ている。