「突き指くらいで整形外科に行くなんて大げさだ」という意識は、昭和・平成の部活動文化などを通じて根強く残っています。しかし、医療相談掲示板やSNS上には、後悔に苛まれる患者の生々しい告白が溢れています。
バレーボールの練習中に親指を突いた30代の会社員男性は、当時の心境をこう振り返っています。「受傷時は激痛でしたが、指が曲がったので骨は折れていないと思い込み、市販の湿布を貼って放置しました。しかし3ヶ月経ってもペットボトルのフタが開けられず、重いフライパンを持つと親指が外側に外れるような感覚に襲われて受診。診断は靭帯の完全断裂とステーナー病変で、結果的に太ももの腱を移植する大掛かりな再建手術が必要になりました」。
日本手外科学会の専門医らも、口を揃えて「母指MP関節の受傷初期における見逃し」に警鐘を鳴らしています。手の外科専門医の診察現場では、受傷から1ヶ月以上経過した慢性期に訪れる患者の約4割に、靭帯の断端癒合不全や不安定性が確認されているというデータも報告されています。親指は手全体の機能の約50%を担う中枢器官です。その付け根の違和感を甘く見ることは、日常生活の自由度を自ら手放すことと同義なのです。