ウイルスの伝播には主に「節足動物(マダニ)を介した感染」と「感染源への直接接触によるヒト・動物間感染」という2つの主要ルートが存在します。
自然界における主要な媒介者は、主に乾燥地帯や草原に生息するイボマダニ属(Hyalomma属)のマダニです。ウイルスを保有したマダニがヒトを吸血する際に唾液腺を介して病原体が体内に注入されます。マダニ自体が生涯ウイルスを保持し、卵を通じて次世代へウイルスを受け継ぐ(経卵感染)ため、マダニそのものがウイルスの巨大な自然宿主(リザーバー)として機能しています。
もう一つの重大な経路が、ウイルス血症を起こしている家畜(牛、羊、山羊など)の血液や組織への直接接触です。流行地域において、屠畜作業や精肉解体、獣医処置の最中に素手で血液に触れることで、皮膚の微細な傷口や粘膜から感染するリスクが極めて高くなります。
さらに警戒すべきは「ヒトからヒトへの二次感染」です。重症患者の血液、嘔吐物、排泄物、体液に濃厚接触した家族や、適切な個人防護具(PPE)を装着せずに処置を行った医療従事者が院内感染を起こす事例が後を絶ちません。飛沫感染のリスクも指摘されており、標準予防策および接触・飛沫感染隔離策の徹底が不可欠です。