野際陽子さんの遺作となったのは、倉本聰氏が脚本を手がけたテレビ朝日系の昼帯ドラマ『やすらぎの郷』でした。かつてテレビ界を支えた大スターたちが集う老人ホームを舞台にしたこの作品で、野際さんは主要キャストの一人として出演していました。
撮影中、すでに病魔は体を激しく蝕んでいましたが、野際さんは酸素吸入器を楽屋に持ち込みながら出番を待つほど過酷な状況でカメラの前に立ち続けました。しかし2017年5月、体調が悪化し無念の一時降板。その後復帰することは叶わず、本編で彼女が演じたシーンが最後の演技となりました。
葬儀は本人の強い遺志に従い、真瀬樹里さんらごく近親者のみの密葬で静かに執り行われました。その後、同年7月に都内ホテルで開かれた「お別れの会」には、倉本聰氏、浅丘ルリ子さん、石坂浩二さん、阿部寛さん、仲間由紀恵さんをはじめとする芸能界の重鎮や共演者約600名が参列。凛とした笑顔の遺影を前に、全員がその気高い女優人生に惜しみない拍手を送りました。