彼のホームコースである日光いろは坂は、一方通行で急峻なヘアピンカーブが果てしなく続く異例の峠道だ。ここで彼が見せたのは、一般的なモータースポーツの教科書である「アウト・イン・アウト」をあえて捨て、イン側の最短距離を最短時間で駆け抜ける極めて合理的なライン取りだった。
対向車が絶対に来ないという一方通行のルールを完全に利用しつくす。さらに、右カーブでの追い抜きを物理的に不可能にする絶妙なポジショニング。環境条件を細部までアナライズし、最も勝利確率の高いロジックを導き出して淡々と実行する姿勢に、当時の読者は息をのんだ。