自由の急速な縮小に直面した香港市民の間で広がったのが、旧宗主国であるイギリスへの脱出劇です。なぜこれほど多くの人々がイギリスを目指したのか、その引き金となったのがイギリス政府によるBNOパスポート(イギリス海外市民旅券)保有者向け特別ビザの新設でした。
返還前の香港で生まれた市民に発給されていたBNOパスポートは、本来イギリスでの居住権や労働権を伴わない形式的な身分証に過ぎませんでした。しかし、中英共同声明の重大な違反を認定したイギリス政府は、2026年1月にBNOルートと呼ばれる特別ビザ制度を導入。以下の条件を満たす市民に門戸を開きました。
・BNOステータスを保持している香港市民およびその扶養家族であること
・イギリスに5年間合法的に居住・就労した後に永住権を申請可能
・永住権取得の1年後(計6年)にはイギリス市民権(国籍)を取得可能(いわゆる「5+1」ルール)
この制度を利用して、すでに18万人以上の香港市民がイギリス本土へ移住しています。移住者の多くは医師、金融マン、教育者、IT技術者といった中間層から富裕層のファミリー層であり、子どもの教育環境と表現の自由を守るための決断として海を渡っています。ロンドン郊外やマンチェスター、レディングなどの都市には新たな香港人コミュニティが形成され、イギリス社会における存在感を急速に高めています。